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モバイルファースト時代のマルチデバイス対応を確実・簡単に

花王株式会社

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独自の発想でWebマーケティングを戦略的に推進している、花王Web作成部の田中剛氏に、花王のWebマーケティング戦略と、x-Servlet導入の経緯および評価について詳しく聞いた。

もくじ

  1. 「広告、PRの中核部分をアウトソースしない」という方針
  2. CMSとして『TeamSite』を、コンテンツ変換ミドルウェアとして『x-Servlet』を活用
  3. ワンソース・マルチユース構想
  4. ホームページの表示デバイスを先読みしても意味はない
  5. 「主要機種だけに、ほどほどに対応していれば良い」という考え方ではなぜ良くないか
  6. マニュアルを精読し、x-Servletを採用
  7. 導入効果
  8. x-Servlet活用のポイント
  9. 今後の期待

「広告、PRの中核部分をアウトソースしない」という方針

── 花王の概要と近況についてお聞かせください。

花王の各種モバイルサイト

花王の各種モバイルサイト

花王は、メリット、アジエンス(シャンプー)、アタック(洗剤)、ソフィーナ(化粧品)、ヘルシア緑茶(飲料)などの商品で親しまれている日用品メーカーです。年商は約1兆2000億円、社員数は花王グループ計で約3万5000人です(*1)。

花王の事業活動の原点は、消費者・顧客の立場にたった「よきモノづくり」です。この原点をさらに確かに実現するべく、2009年6月には、エコロジーを経営の根幹に据えるべく「 環境宣言」を行いました。また、こうした企業姿勢をお客様に広く伝えるための広報、宣伝活動にも、引き続き力を入れています。

花王では、「自社の商品の魅力をいちばん良く伝えられるのは自分たち」という信念のもと、伝統的に「広告、PRの中核部分をアウトソースしない」という方針を貫いています。かつてはテレビCMさえも社内で自主制作していた時期がありました(*2)。現在も、店頭での販促ビデオの多くは自分たちで制作しています。

私が属するWeb作成部は、その名のとおり、Webを通じたお客様コミュニケーションに責任を持つ部門です。「作成部」の名の通り、コピーライティングを始め、クリエイティブを担当する社員も多く有しています。Webマーケティングの方針は必ず自分たちで構想しますし、情報システムの基盤コンセプトも自分で構想します。私自身、花王に入社する前は技術者(プログラマ)だったので、システムの中核部分は、外部に丸投げせず、原理を理解した上で構築したい(するべきだ)と考えています。

一方、個別の要素技術に関しては、外部の専門企業の助力を積極的に借りる方が良い、その方が我々はやるべきマーケティング業務に注力できるとも考えています。現在、CMSとして『TeamSite』を、携帯電話向けコンテンツ変換ミドルウェアとしては『x-Servlet』を活用しています。

  • *1: いずれも2010年度、連結のデータ
  • *2: 社内には収録スタジオや編集室などの設備もありました。

CMSとして『TeamSite』を、コンテンツ変換ミドルウェアとして『x-Servlet』を活用

── 『TeamSite』および『x-Servlet』の活用状況について詳しく教えてください。

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TeamSiteは、2001年以来、花王の標準CMSとして活用しています。花王の企業ドメインの配下にあるホームページは、パソコン用、携帯電話用共に、ほぼすべてTeamSiteで管理しています。TeamSiteの構築・運用は伊藤忠テクノソリューションズ(以降 CTC)に依頼しています。

その後、2006年に花王では「Web2.0プロジェクト」を実施しました。この時のコンセプトは「ワンソース・マルチユース」。作成したコンテンツをすべてデータベースで管理し、あらゆる媒体で使い回せる体制、同じ内容を二度書かないという体制を目指しました。

この構想に基づき、「一つの携帯電話向けホームページを、そこにアクセスしてくる携帯電話機種に合わせて、コードを自動変換する」という状態を実現したいと考え、携帯電話向けコンテンツ変換ミドルウェア x-Servletを導入しました。現在、TeamSiteと組み合わせる形で活用しています。

花王の携帯電話向けホームページは2007年当時は3サイトでしたが、現在は約30サイトに増えました。これら30サイトすべてをx-Servletで変換しています。将来的には、一般携帯電話のみならず、iPhoneなど各種スマートフォン、その他、「パソコン以外でブラウザが搭載される全てのモバイルデバイス」へのコンテンツ変換をx-Servletに任せられればと考えています。

ワンソース・マルチユース構想

── 2006年に実施した、Web2.0プロジェクト(ワンソース・マルチユース構想)について詳しく教えてください。

ワンソース・マルチユース構想については、「コンテンツ管理の効率化」と「消費者起点のコミュニケーション」の二つの視点からの説明が可能です。

視点1. 「コンテンツ管理の効率化」

花王では、会社本体のブランドサイトの他、ソフィーナ、ビオレ、アジエンスなど商品別に30近くのホームページを有しています。また期間限定のキャンペーンページも多くあり、管理対象となるホームページの数は多数です。これらのホームページを別々に作って別々に管理するのは非効率的です。そこで商品の仕様表記や紹介文、画像などあらゆるコンテンツを、すべてデータベースに「要素(パーツ)」として格納し、個々のホームページからはそれら要素(パーツ)を動的に取り出して再構成できるような状態、一度作った要素(パーツ)を徹底的に使い回せる状態(ワンソース・マルチユース)を実現し、ホームページの数が増えても、効率的に管理できる状態を実現したいと考えました。

視点2. 「消費者起点のコミュニケーション」

通常、ホームページは、パソコン上のブラウザから見るものと考えがちです。しかし、弊社のようにお客様が消費者、生活者である場合、ホームページの表示デバイスとしてはパソコンの他に携帯電話も多用されるはずです。たとえば衣服の材質に合わせた洗剤の適切な量を調べたい時、洗濯機の前で使うのは、パソコンではなく携帯電話でしょう。同様に、台所で何かを調べるとき、店頭でQRコードをかざすとき、お客様が使うのはやはり携帯電話でしょう。特に花王のお客様は、主婦やOLなど女性が多く、ホームページを見るときパソコンよりは携帯電話を使う確率が高いと予測されます。

視点2. 「消費者起点のコミュニケーション」

── 「花王のお客様(主に女性)は、パソコンよりも携帯電話を良く使う」と考えているわけですね。

いや、その言い方だとちょっと違うんですよ。女性だから全員が携帯電話を多用するとは限らない。中にはパソコンを好む人もいるでしょう。ゲーム好きの女性ならPSPなどゲーム機で検索するかもしれません。「主婦だから携帯電話」という決めつけは危険です。そうではなく「お客様は十人十色、誰が何のデバイスを使っているか、結局のところ分からない。分からないものを予想してもしかたがない」と考えるべきです。この前提から出発したとき、とるべき態度は、「お客様が、どのデバイスを使おうとも花王のホームページが正しく表示されるように、ホームページ自体を予めすべてのデバイスに対応させるべきである」というものになります。

しかし、数十種、数百種の多種多様なデバイスに合わせて、数十種、数百種のホームページを別々にコーディングしていたのでは、コストが引き合いません。また消費者向け商品の場合、「旬、タイミング」に合わせて、キャンペーンサイトは素早く立ち上げなければいけませんが、デバイスへの個別対応の方式ではそのスピードも確保できません。

この問題を解決するには「一つの基本ソースコードを作り、そのソースコードをアクセスしてきたデバイスに合わせて、適切に変換するようなソフトウェアがあれば良い(ワンソース・マルチデバイス)」と発想できます。これが、花王のシステムにおいて、x-Servletのようなコンテンツ変換ミドルウェアを必要とする所以となります。

「主要機種だけに、ほどほどに対応していれば良い」という考え方ではなぜ良くないか

── 「花王では、お客様が使う可能性がある全てのデバイスにおいて、画面表示の完全対応を目指す」というお話でした。しかし、一方では「完全対応までやる必要はない。少しぐらい表示が乱れても情報が読めればそれでよい。『だいたいの対応』ができていれば、それで十分」とする考え方もあります。この考え方をどう思いますか。

その考え方にも一理ありますが、「だいたい対応できていれば十分」という考え方は、花王としては採用できません。私たちにとって最も怖いのは「表示が乱れる」を超えた「表示がなされない」という状態です。例えば、携帯電話の中にはキャッシュメモリのサイズが小さい機種があります。そうした機種で長大なページを表示しようとするとサイズオーバーでエラー表示になることがあります(*3)。

それは「お客様が花王の製品の情報を知りたいと思い、わざわざホームページにアクセスしてくださったにも関わらず、結果として情報提供がなされない」という事態であり、お客様コミュニケーションにおいて、あってはならない機会損失です。この考えに基づき、花王では「だいたい対応できていれば十分」ではなく、「どんなデバイスでも完全対応」という状態を目指しています。

*3: x-Servletを使えば、機種のキャッシュメモリサイズに合わせて、ページを自動分割して表示させることができます。

マニュアルを精読し、x-Servletを採用

── コンテンツ変換ミドルウェアの製品選定はどのように行いましたか。

花王 田中剛 氏

「x-Servletは動作原理が納得できるものでした」

CMS(TeamSite)の構築・運用パートナーであるCTCに、「何か良い製品を見つけてきてください」と依頼しました。すると「x-Servletが性能、実績共に良いと考えます」と提案が来ました。第一印象としては「ホントにできるのかな」と眉唾でしたが、オンライン上に公開されていたマニュアルをプリントアウトして読むなどして調査した結果、「本当にできる」と見込みがつきました。

── 「マニュアルを読むなどして調査した」とは具体的には。

先にも述べたとおり、私は元が技術者なので、ソフトウェア製品の宣伝文句を安易に信用しません。興味がある製品については、自分でマニュアルを読んで、動作原理や制限事項などを調べることにしています。特に、動作原理の理解は重要で、それさえ理解していれば、社内からこの機種の場合は対応できるのかといった「応用問題」が質問された場合でも、根拠のある回答ができます。

x-Servletのコンテンツ変換の原理、新しい機種へ自動で対応する仕組みなど、マニュアルを読んで納得できました。またTeamSiteなど花王の既存システムとの相性についても問題ないと理解できたので、これを採用しました。

導入効果

── 現在の導入効果はいかがですか。

所期の目的である「携帯電話の全機種への対応」、「将来のマルチデバイス対応の基盤の確立」、「運用コストの大幅削減」について、予定どおり実現できました。

特に、「運用コスト」については、もしx-Servletを使わず、N個のサイトを立てていたとすればデバイス対応コストもN倍になっていたはずですし、キャリア別・機種世代別であればその倍数になっていたはずです。しかしx-Servletがあることで、その運用コストは消滅させることができました。

x-Servlet活用のポイント

── 実際にやってみて解かった、「ホームページのマルチデバイス対応を成功させるためのポイント」などあれば教えてください。

成功のポイントというよりは、私見としていくつかコメントを。

x-Servletの導入のコツとしては「まずスモールスタート。小さく始めてみて様子を見ながら拡張する」というやり方が良いと考えます。

また先ほども述べたとおり、お客様が何の端末を使って自社のホームページを見に来るかは、究極とのところ、わかりません。仮説を立てるのは良いと思いますが、「決めつけ」はしない方が良いと個人的には考えます。

今後の期待

── x-Servletへの今後の期待についてお聞かせください。

まず当面の課題として、x-Servlet には iPhone や Android などスマートフォンへの対応を期待しています。スマートフォン・ユーザーは情報収集意欲が旺盛で、ホームページでの滞在時間も長い。今後、重視すべきユーザーです。またスマートフォンのみならず、タブレット型デバイスやPSPやニンテンドーDSなどモバイルゲーム機を含めた「ブラウザが搭載される全てのモバイルデバイス」に、今後x-Servletが確実に対応してくださることを強く期待いたします。

TeamSite と x-Servletは、今や花王にとって、Webを通じたお客様コミュニケーションのための重要なシステム基盤です。今後とも不断の進化を続けてください。期待しています。

花王様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

[事例会社]

kao - 自然と調和する こころ豊かな毎日をめざして

花王株式会社
〒103-8210 東京都中央区日本橋茅場町1-14-10
WEBサイト: http://www.kao.com/

[取材協力]

CTC伊藤忠テクノソリューションズ

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
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