携帯サイトの品質 ~ISO的考察~
はじめに
テクニカルノート「フレックス・ファームの品質への取り組み」では、品質の原義的なところから我々のビジネスとの関係を考えましたが、ここではISOの定義から品質を考えて見たいと思います。
ソフトウェア品質のISOによる分解
さて携帯サイトの品質に関して考えるとき、そのものズバリの知識体系は世の中に存在しないと思いますが、ISO/IEC9126(JIS X 0129)のソフトウェア品質の定義が最も参考になると考えました。以降はその定義を携帯サイトにあてはめるとどうなるかを考察したものです。
まずISO/IEC9126(JIS X 0129)の定義によると一般的なソフトウェアの品質は以下の4つに分解できると書いてあります。

簡単にそれぞれを説明すると以下のようになります。
- プロセス品質
- ソフトウェアを作るための人・組織が持っている手順の品質
- 内部品質
- 上記の人・組織によって作られたプログラムコードそのものの品質
- 外部品質
- 上記のプログラムを外部から操作して分る品質
- 利用時の品質
- 利用者が実際に使ってみたときの品質
これらの品質は、相互に関係があります。例えば、プロセス品質がよければ、内部品質がよいことが期待でき、外部品質がよければ利用時の品質のよいことが期待できるといった関係です。もちろん必ずそうなる訳ではありませんが、関係性のあることは理解してもらえると思います。
携帯サイトの品質
次は携帯サイトの品質への適用を考えてみたいと思います。
まず、「プロセス品質」、「内部品質」、「外部品質」、「利用時の品質」の4つの品質が当てはまることはまず間違いありません。
しかしこの中で、我々が直接影響を与えられる部分を考えると、「外部品質」のみになりそうです。
というのは「プロセス品質」、「内部品質」は開発チーム内の活動の領域なので、外部からの支援は中々難しいからです。
また「利用時の品質」はお客様と我々の最終ゴールに近い品質といえますが、直接的な影響を与えることは難しく、「外部品質」を通して間接的に影響を与える形になりそうです。
という訳で、「携帯サイトの外部品質」に範囲を絞って考察を進めます。
携帯サイトの外部品質
ISOによるとソフトウェアの外部品質は以下のような特性とその副特性に分解できます。
品質特性 | 外部品質 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
機能性 | 信頼性 | 使用性 | 効率性 | 保守性 | 移植性 | |
品質副特性 | 合目的性 | 成熟性 | 理解性 | 時間効率性 | 解析性 | 環境適用性 |
正確性 | 障害許容性 | 習得性 | 資源効率性 | 変更性 | 設置性 | |
相互運用性 | 回復性 | 運用性 | 効率性標準適合 | 安定性 | 共存性 | |
セキュリティ | 信頼性 | 魅力性 | 試験性 | 置換性 | ||
機能性標準適合 | 標準適合 | 使用性標準適合 | 保守性標準適合 | 移植性標準適合 |
これをまず携帯サイトの母体ともいえるWebサイトに当てはめて、具体的かつ大まかに考えてみると、以下のようになるのではないでしょうか。
副特性 | Webサイトの具体例 |
---|---|
機能性 | コンテンツ(テキスト、画像、音声など)の再現性 |
リンク、ボタン、コンポーネント、ナビゲーションの動作性 | |
入力データおよび表示データの正確性 | |
他システム(例えば課金)との相互運用性 | |
インターネット上からの悪意ある攻撃に対する安全性 | |
信頼性 | 障害が起きたときの耐性 |
障害からの回復性 | |
使用性 | 利用者から見た使いやすさ、サイトの事業者から見た運用のしやすさ |
効率性 | レスポンス |
負荷性能 | |
保守性 | コンテンツおよびプログラムの修正のしやすさや、問題解決のしやすさ |
移植性 | プログラムの別サイトへの移植のしやすさ |
携帯サイトの品質特性は、これらのことが当然ベースとなります。
プラスアルファの部分で、携帯サイト固有の品質特性を考えると以下のようになるのではないでしょうか。
副特性 | 携帯サイトの具体例 |
---|---|
機能性 | 多様な機種に対しての再現性、動作性 |
キャリアG/Wとの相互運用性 | |
使用性 | サイトの事業者から見た新機種対応の容易性 |
保守性 | 多様なブラウザ環境下での問題判別の容易性 |
コンテンツ更新時の機種対応性 |
フレックス・ファームのビジネスと品質特性との関係
このようなISO的な品質特性という視点でも、x-Servletと実機テストサービスは品質向上に貢献しているといえます。具体的には以下のような関係になります。
1.x-Servlet
x-Servletは以下の品質副特性において、Webサイトの中で使われるミドルウェアという立場で貢献があるといえます。
Webサイト一般の品質副特性 | 機能性 | インターネット上からの悪意ある攻撃に対する安全性 |
保守性 | コンテンツおよびプログラムの修正のしやすさや、問題解決のしやすさ | |
移植性 | プログラムの別サイトへの移植のしやすさ | |
携帯サイト固有の品質副特性 | 機能性 | 多様な機種に対しての再現性、動作性 |
キャリアG/Wとの相互運用性 | ||
使用性 | サイトの事業者から見た新機種対応の容易性 | |
保守性 | 多様なブラウザ環境下での問題判別の容易性 | |
コンテンツ更新時の機種対応性 |
この中で、新しい発見だったのが「プログラムの別サイトへの移植のしやすさ」という点です。多様な携帯電話へ対応させるための機能を、x-Servletの中にまとめて詰め込んでおく形になるので、このことがいえる訳です。もし多様な機種対応のロジックがプログラム中に散在するようなアーキテクチャーを選択するとこの副特性は確実に低くなると思います。
2.ケータイ・マイスタ 実機テストサービス
実機テストサービスは以下の品質副特性について、第3者の立場で品質の検証をしてきたといえます。
Webサイト一般の品質副特性 | 機能性 | コンテンツ(テキスト、画像、音声など)の再現性 |
リンク、ボタン、コンポーネント、ナビゲーションの動作性 | ||
入力データおよび表示データの正確性 | ||
他システム(例えば課金)との相互運用性 | ||
使用性 | 利用者から見た使いやすさ | |
携帯サイト固有の品質副特性 | 機能性 | 多様な機種に対しての再現性、動作性 |
キャリアG/Wとの相互運用性 |
このように考察してきますと、今まで気づかなかった品質への貢献と、まだまだカバー出来ていない品質特性があることが分かってきました。
フレックス・ファームでは、これからもさまざまな視点から品質向上に貢献できる製品やサービスの提供に努めていきたいと思います。